Making of / 制作ノート

SPECIMEN-07

うなじの触手で掴み、振り回し、封鎖される研究所から 5 分で脱出する 3D アクション。企画を書き始めてから、3 つの章と 2 つの結末まで遊べる形になるまで、およそ 1 週間。作者のいのべえが AI(Claude Code)と組んで作りました。そのあいだに何を考え、どう変わっていったかの記録です。

unityroom で遊ぶ ブラウザですぐ遊べます。キーボードとマウス、コントローラーに対応。
PV(75 秒・音あり) ゲームから撮った映像を自動で組み立て、After Effects で仕上げました。
作り始めて最初に遊べるまで約 4 時間
作り始めから公開まで約 1 週間
公開10 月 10 日
公開までの変更の記録約 150 回
章 / 結末3 章 / 2 つ
組んだ AIClaude Code
Day 0 / How it started

どういう企画から始まったか

作者がゲームを作り続ける挑戦の 1 本目として、10 月 1 日の夜に企画を書きました。最初に決めたのは、絵や物語より先に「プレイヤーが何に迷うか」です。

一言で言うと: 人の形をした実験体が、首の後ろ(うなじ)から生えた 2 本の触手で研究所から逃げる。途中で 3 本目が生える。

迷いどころ: 敵は脅威であり、燃料でもある。倒すと封鎖のタイマーが戻るので、避けて先を急ぐか、寄って倒して時間を稼ぐかを、ずっと選び続ける。寄り道の標本で触手が伸び、技を止めずにつなぐほど得点の倍率が上がる。

遊びの入れ子: 3 秒(触手で掴んで飛ぶ・投げる)、30 秒(区画を抜ける)、3 分(研究所からの脱出。毎回違う道で)。

先に固めること: キャラ・カメラ・操作の手触り。数値は遊びながら変えられるようにし、入力は少し甘く受け付け、うまくいった瞬間に止め・揺れ・音を入れる。

The week

1 週間の軌跡

Day 110/2変更 22 回

4 時間で通しで遊べる形に

作り始めて約 4 時間後の深夜 2 時に、人の形の動き・カメラ・触手(掴む・掴み替える・離す)・敵・練習・画面の表示・タイトルと結果までがつながり、通しで遊べるようになりました。昼には、ステージを広げ(動くフックの搬送ライン・レーザーの警備区画・雨の夜の地上ヤード)、見た目を自作のシェーダーと粒子で作り直しました。午後には、触手を「うなじから細く生える」形にし、3 本目が生える場面を足しました。

暗い標本ホールで触手を伸ばす主人公
標本ホール 暗い研究所に、触手と体の血管だけがピンクに光る
月明かりの地上ヤード
雨の夜の地上ヤード 120m 四方を飛び回る
Day 210/3変更 18 回

棒立ちをなくし、7 人に遊ばせ、最後のボスを入れる

触手を出す時に体が棒立ちになっていたので、狙う向きへ体ごと向き、手で手繰るように動きを合わせました。7 タイプの想定プレイヤー(うまい人・苦手な人・説明を読まない人・審査員・実況者 など)に通しのプレイを見せる机上のテストをして、「動かせるまで 28 秒は長い」「パッドなのに『クリック』と出る」などを直しました(AI が想定した人物なので、本物の人のテストの代わりではありません)。夜には、触手に吊られた操り人形のような最後のボス「回収用素体00」と、ゲームの文の書き直し(219 件を見直して 129 件)。

体の動き(29 秒) 伸ばす・ぶら下がる・振り回す・飛び蹴り
最後のボス(52 秒・音あり) 刺さった触手をちぎって投げ返し、開いた胸を蹴る
Day 310/4変更 13 回

顔と音と文

左下の顔の窓や通信の窓の立ち絵を、ChatGPT の画像生成で作った本番の絵に替えました(主人公 8 表情・通信の相手 6 表情。作り方は下の節に)。呼吸・まばたき・口ぱくで動き、被弾や技、時間切れの前で表情が変わります。効果音は、自由に使える CC0 の素材 39 個を波形から切り出して重ね直しました。画面に出る文は約 310 行を 1 つの表にまとめ、作者が表を直して保存するだけでゲームに当たるようにしました。最後のボスには、全部抜くと胸が開く「守りの触手」を足しました。

立ち絵の表情(70 秒・音あり)
Day 410/5変更 15 回

物語が 3 章に広がる

作者の台本で、オープニングを作り直しました。曲は作者が音楽生成 AI で作ったものに替え、イントロは 1 回だけ鳴らし、曲の後半から前半の似た所へ重ねて戻るループにしました。アクションが苦手な人向けの「やさしいモード」。そして、研究所を出た後の第2章「夜明けの街」と、第3章「最後の一本」のたたきを、同じ日に入れました。

オープニング(28 秒・音あり) 作者の 12 の言葉に合わせて場面を組んだ
Day 510/6変更 13 回

人物を 3D に

立ち絵から前・左・右・後ろの三面図を作り、3D のモデル生成で骨の入った人型にして、ゲームの動きをそのまま使えるようにしました(作り方は下の節に)。第2章のヘリと所長の戦い、怒りで体が侵食されていく見た目、街の仕上げ(浮いていたリングに支え、封鎖の車、信号、電線)。ブラウザ版も軽くしました。

三面図と 3D モデルと顔
三面図 → 3D モデル 上は ChatGPT の三面図、中は Tripo の 3D、下はその顔
屋上のヘリ
屋上のヘリ
夜明けの街の大通り
夜明けの街
Day 610/7変更 16 回

仕上げの頼みをまとめて

作者が遊んで出した頼みを、まとめて直した日です。行の終わりに 1 文字だけ落ちる折り返しをなくし、敵の体力の帯を作り直し、ボスの最後の一撃を「止め・2 色の絵・下から見上げる絵・ゆっくり」で決めました。字体も替えました。何も選ばなかった時の字体は AI が作る画面の定番なので、見出しは記録らしい明朝、会話と説明は台詞らしい字にしています。PV の企画と絵コンテもこの日に。

最後の一撃
最後の一撃
新しい字の練習の札
字体を替えた 見出しは明朝、説明は台詞の字
Day 710/8変更 19 回

unityroom に置く

場面の後のカメラのずれを直し、押している間ずっと走るダッシュと、遊び方の画面(マウスとコントローラーのタブ)を足して、unityroom に(まだ非公開で)登録しました。アイコンは、ゲームの録画から振り子とドローンを振り回す場面を切り出して作りました。

この日の通しプレイ(研究所の前半) タイトル → オープニング → 練習 → 標本ホール
遊び方(マウスとキーボード)
遊び方の画面
ゲーム中の画面
ゲーム中の画面
+2 日10/9〜10/10変更 28 回

PV と、公開前のデバッグ

unityroom のランキング(集めた標本の数)と、毎回変わるタイトルの背景を入れました。PV は 3 本(ティザー 30 秒・本編・縦長)作り、本編は意味の薄いカットを削って 89 秒から 75 秒に詰めました。公開の前には、遊ぶ間ずっとエラーや「先へ進まない所」を記録する見張り役を作り、自動で全部の章を遊ばせて、見つかった 21 か所を直しました。10 月 10 日の夜に一般公開しました。

Before / After

途中で大きく変わったこと

触手

前の触手。平たい帯が横に張り出している
筒の内側が見えていて、平たい帯が横に張り出していた
新しい触手。うなじから細く生えて背中へ垂れる
うなじから細く生えて背中へ垂れ、先へとがる

見た目の方向(Day 2 の夜)

黒・白・濃いピンクの画面に、放射状の集中線と傾いた大きな文字を重ねると、有名な作品の雰囲気に寄って見えてしまいます。そこで、研究所の「標本台帳」(記録用紙・朱の判子・赤ペン)に見た目をそろえ、主人公の見せ場だけ、紙を内側から触手が破るようにしました。

集中線と傾いた文字のカットイン
記録用紙に判子、紙を触手が破る

タイトルのメニュー

文が重なったメニュー
長い文がボタンからはみ出して重なっていた
直したメニュー
文の長さに合わせて字が収まる
How it was made

作者と AI の分担

だれがやったこと
作者(いのべえ)企画・オープニングの台本・せりふの直し・見た目や手触りの判断・遊んで「ここが変」を出す・最後の決定
Claude Code(Anthropic)ゲームのプログラム、ステージやシーンをコードで組み立てる道具、自分でゲームを遊んで確かめる仕組み、PV を組み立てる道具、デバッグ
ChatGPT(画像生成)立ち絵(主人公 8 表情・通信の相手 6 表情と、まばたき・口の差分)、3D のための三面図
Tripo(3D 生成・画像生成)人物 3 人と最後のボスの 3D、車・刃・判子を押す手の 3D、遊び方の画面の機器の図
音楽生成BGM(作者が Suno で作成)
Images and 3D with AI

ChatGPT と Tripo で、絵と 3D を作る

人物の絵と 3D は、画像生成と 3D 生成の AI で作りました。ただ、AI に「描いて」と頼むだけでは、表情ごとに顔の位置がずれたり、ゲームの動きに使えない形で出てきたりします。そこで、Claude Code が頼み方の文と、できた物をゲームに入れる道具を作り、作者が 1 枚ずつ確かめて進めました。

最初の絵から本番まで

いちばん最初の顔は、Claude Code のコードが図形を重ねて描いた仮の絵でした(10/3 の夕方)。その夜、ChatGPT で描き込んだアニメ調の絵を作り、作者の頼みで手描き風に寄せた案も試しました。けれど、作者が最後に選んだのは仮の絵の素朴さでした。そこで仮の絵だけを ChatGPT に渡し、顔・髪・服・触手の形はほとんどそのままに、線と塗りだけを少し整えてもらって、それを本番の基準の絵にしました。仮の絵から本番まで、約 5 時間です。

コードが図形で描いた仮の顔
01仮の絵(10/3 19 時)。コードが図形を重ねて描いた
ChatGPT で描き込んだアニメ調の試作
02試作(22 時)。ChatGPT で描き込んだアニメ調
手描き風に寄せた試作
03試作(22 時)。作者の頼みで手描き風に
仮の絵を元に整えた本番の絵
04本番(翌 0 時)。仮の絵を元に、線と塗りを少し整えた
通信の相手の仮の絵
通信の相手の仮の絵(コード)
通信の相手の本番の絵
仮の絵を元に、主人公の絵の雰囲気に合わせて整えた

立ち絵(ChatGPT の画像生成)

  1. 先に仕組みを作る。本番の絵が来る前に、コードが図形で描いた仮の顔(45 枚)で、まばたき・口ぱく・表情の切り替えを動かしておいた。絵を決まった名前で置くだけで入れ替わる
  2. 人物の設定から、頼む文を書く。Claude Code が性格・過去・話し方をまとめた人物の設定を書き、それを元に ChatGPT へ送る文を作った。絵の大きさ・胸から上・背景・光の向き・全部の絵で同じ服と位置、そして「特定の作家や作品の絵柄に似せない」を決まりとして入れた
  3. 1 枚ずつ確かめる。まず「ふつう」の顔を 1 枚。作者が OK を出してから、構図を変えずに表情だけを変えた絵を作った。主人公 8 表情、通信の相手 6 表情
  4. まばたきと口の差分。表情ごとに、目を閉じた絵と口を開けた絵を、ChatGPT の画像の編集(範囲を選んで直す)で作った。目を閉じて口も開けた絵は、2 枚から機械的に合成した
  5. ずれを消す。生成するたびに髪や服の線がわずかに動くので、そのまま切り替えると絵がガタつく。顔の所だけを基準の絵に貼り戻す道具を作り、顔の外は 1 枚の絵のままにした
  6. ゲームの中で動かす。Claude Code が書いたシェーダーで、呼吸・揺れ・まばたき・表情の溶かし切り替え。口ぱくは文字が出る速さに合わせ、句読点で止まる
主人公の 8 つの表情の立ち絵
主人公の 8 表情(ChatGPT) 上: ふつう・決意・怒り・痛み、下: 驚き・安堵・焦り・覚醒
通信の相手の顔の 4 つの差分
まばたきと口の差分 そのまま・目を閉じる・口を開ける・両方。顔の外は同じ絵なので、切り替えてもガタつかない

第3章で暴走していく 4 段階の立ち絵は、作者の ChatGPT のアプリ(Work モード・GPT-6.1 Sol)を、作者に頼まれた Claude Code が画面操作で動かして作りました。頼む文も Claude Code が書いています。

3D の人物(ChatGPT の三面図 → Tripo)

  1. 三面図。本番の立ち絵を元に、ChatGPT で前・左・右・後ろの 4 枚を作った(両腕を少し開いた立ち姿・無地の背景)
  2. 3D にする。Tripo の多視点の生成に 4 枚を入れた。設定は、いちばん良いモデル(H3.1)・4K の色の絵・光の影響を除く・四角形 2 万面・非公開
  3. 骨を入れる。Tripo の自動の骨入れで人型の骨を入れ、FBX で書き出した。Unity に人型として取り込むと、主人公のために作った走る・跳ぶ・振り回す動きを、そのまま使える。1 体あたり 3D に 55、骨に 20 クレジット
  4. 手直し。3 人の背の高さをそろえ(1.66m・1.68m・1.84m)、所長のネクタイの赤がシャツににじんで血のように見えた所を、コードで塗り直した。顔の陰がまだらに見えたのは、頭の丸みに沿って陰を付け直して消した。ブラウザ版のために色の絵を 2048 に縮めた

Tripo の画面は、作者のブラウザで Claude Code が操作しました。生成の設定と手順は、すべて記録に残しています。

最初の体。人型の人形にピンクの血管
最初の体。人型の人形に、光る血管を描いた
3D になった主人公の後ろ姿
3D の体(10/7 から)。動きは最初の人形のまま、見た目だけ替えた
通信の相手の三面図。前・左・右・後ろ
三面図(ChatGPT) 前・左・右・後ろ。この 4 枚から Tripo が 3D を作る
第3章で刃を振り抜くミナトの 3D
ゲームの中の 3D ミナトと刃(どちらも Tripo)
雨の中で守りの触手を広げる最後のボス
最後のボス 00 参考絵も Tripo の画像生成で作った

小物と、つまずいた所

守った決まり

What we kept in mind

作りながら大事にしたこと

迷いどころを先に決める

安全な道と強気な道を両方用意し、強気な道のごほうび(時間が戻る・倍率が上がる)を画面で見せる。

ほかの作品に似せない

参考にするのは手触りやテンポの考え方まで。配色・文字・構図はまねず、ゲームの中の「標本台帳」から見た目を作る。

「AI っぽさ」を減らす

何も選ばなかった時の字体、意味のない英字のラベル、細い枠線の箱、左右対称、どこも同じ強さの演出。AI が作る画面によく出る癖を一覧にして、1 つずつ直した。

動きながら一瞬で読める文

命令形やダッシュ、大げさな言葉を使わない。目的は 1 行に 1 つ。キーボードとコントローラーで言い方を変える。

遊んで、確かめて、直す

バグはまず同じ手順で起こしてから直し、直った後も同じ手順で確かめる。公開の前に自動で全部の章を遊ばせた。